|
△どこの学校の音楽室にも飾ってあるA・リーダーの肖像を眺めながら、「こっちをちゃんと見てくださいませんか。しかも本来の姿でお願いしますよ」と新聞記者みたいに語りかけたところ、「見えた」のがこの肖像。 わがシューベルト肖像第二弾であります。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ■前回は、「霜おく髪」について、引き裂かれるような旋律も聞こえてくることを承知で、あえて視覚的なことに関心を示したことを記しました。前者については私がわざわざ言うまでもないことですので。 「霜おく髪」という表現はいわば翻案にあたるのでしょうが、私たちにとってはたとえば万葉集の、 ありつつも君ば待たむうち靡くわが黒髪に霜の置くまでに(巻二、八七) あるいは、 居明かして君をば待たむぬばたまのわが黒髪に霜はふれども (同八九) が、遠くこだまして聞こえてくる表現だろうと思います。 因みに上記二首は白川静氏 『初期万葉論』 を紐解いていて偶然目にしたものでありますが。 氏によれば、その歌は「挽歌」であろうといいます。そして折口信夫の説、 「挽歌といふのは、人が死んだことを中心にしてゐる歌だが、・・・・・・死んだ人の魂を呼びよせることが忘れられると、挽歌も恋歌の様に見られてくる」 を、紹介しておられます。非常に興味深い。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ■さて、2つめのシューベルト肖像画も「見つかった」ことですし、ちょうど私が最も触れたかった第15曲「烏(カラス)」にそろりそろりと、入っていくことにします。 ※烏の表記の後に(カラス)と添えているのは、ブログでは字が細かいので「鳥(トリ)」とほとんど区別がつきにくいからです。しかし烏の文字は使いたいわけです。白川氏の説を引用したりしたついでですから、「烏(カラス)」について氏の書『漢字百話』に尋ねてみますと、こうありました。嗚呼についての項です。 「烏は象形字であるが、その字形はふしぎに生気を失った形にかかれている。下体は力なく垂れ、何かに繋げられているようにみえる。烏を孝鳥などというのは後世のことで、この色黒く貪欲にして忌憚なき鳥は、古くから悪鳥とされていたことは疑いない。」云々 もちろんこれは漢字をめぐる論考ですから、シューベルト=ミュラーに結びつける論拠はなにもありません。ただ、私のシナプスが繋がっているだけのことです。ただ、言えるのは、私たちが日本語で「烏(カラス)」と読み、思い浮かべる時、たとえそれが翻案であろうが翻訳であろうがそこで、漢字の「象徴」するものを引き受けてしまっているということです。言い換えれば、そこで特にヨーロッパ語からの日本語に変えたときにあらたな意味を付加している、変貌させているということになりましょうか。 そして変貌・変容とは私の最も関心を寄せるキーワードではあるのです。 ■このブログ記事のはじめの方で強調して書いた(つもりな)のですが、「象徴」が重要なキーワードのキーワードになります。 単なる比喩、暗喩ではない、象徴とは何か。しかし象徴というもの自体がそうとうに厄介なもののようなのですが。 ※ところで、『冬の旅』で、 一羽の烏があの街から 僕のあとについて来た 今日まで絶えることなく 頭の上を舞っていた (甲斐貴也 訳) と、烏は青年のあとを追いかけているのでしたっけ。Der Stadt が 彼がさすらいを出発した町のことかどうかわ私にはわかりませんが、そう考えてよいならば、私の中では市門、菩提樹から立ち去ったあたりで夜が明けて烏が追いかけ始めたと思っています。もちろんこのような散文的な想像はどこまで意味があるのかは承知の上ですが。 しかし夜明け前に青年が出発したのであれば、それはそれで私に連想に次ぐ連想(=妄想)を呼び起こします。 ■ところで、第1曲で歌われた、青年の伴連れであるはずの、あの「月影」はどうなったのでしょうね。 ここでまた万葉集が思い出されてしまいました……。嗚呼、これは次の記事で。 |
| << 前記事(2008/11/17) | トップへ | 後記事(2008/11/20)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
この「霜おく髪」と最初に訳した人は、日本の古典の素養があったのかも知れませんね。 |
Zerlina 2008/11/21 19:16 |
Zerlina 様へ。 |
辻乃森 2008/11/21 19:57 |
私がここで、コメントを書いている間に、最新記事がアップされていて、そこで、辻乃森さんも、ボードレールの「悪の華」に触れられているのを知り、驚きました。 |
Zerlina 2008/11/21 21:10 |
Zerlina 様へ |
辻乃森 2008/11/21 21:28 |
| << 前記事(2008/11/17) | トップへ | 後記事(2008/11/20)>> |